印刷分野におけるユニバーサルデザインへの高い関心を反映して、第2回のメディア・ユニバーサルデザインコンテストは第1回201作品を上回る352もの応募作品が寄せられ、非常に盛況であった。工夫を凝らした作品を応募いただいた数多くの方々に、深い謝意を表したい。
昨年に比べ、単に応募作品が増えただけでなく、質的に大きく向上したことが特筆される。昨年は、ユニバーサルデザインとして優れているか以前にデザイン作品として質的に課題があった作品や、どのようにすれば見えやすくなるか・使いやすくなるかについて大きな誤解が見られた作品が少なからず存在したが、今回はそのような作品が大きく減少し、質の高い競争となった。
今回のコンテストはカレンダー部門、マップ部門、その他の部門にわけて作品が募集されたが、非常に多岐にわたる内容の応募が寄せられたため、審査に当たっては前回同様、応募作品を類似のジャンルごとに細かく分類しなおして審査した(大型、中型、小型のカレンダー・冊子・パンフレット・ポスター・チラシ・地図案内図・路線図・ラベル・ゲーム・大型サイン・小型サイン・パッケージ等)。最終的に、カレンダー部門(応募108作品中入選5作品、4.6%)、マップ部門(応募30作品中入選3作品、10%)、その他の部門(応募214作品中入選20作品、9.3%)となった。また応募者別では、一般(応募244作品、入選24作品、9.8%)、学生(応募108作品、入選4作品、3.7%)であった。
選考に当たっては、
・ 色弱や白内障、弱視など、視覚の特徴にかかわらず見やすいものになっているか?(色弱 については、各タイプの色弱の審査員が見て、実際に見やすいかどうかを選考の大前提とした。)
・ 色を上手に使っているか?(色を使わなかったり、色数を極端に制限すればよいというわけではない。)
・ 実用性もしくは実現可能性に優れているか?
・ デザインとして美しいか?
・実際の使い勝手をよく考慮しているか?
・新しい創意や工夫が見られるか?
の6点に重きを置いた。
それぞれのジャンルの中から、そのジャンルの応募数や全体的な作品レベルに応じて、優れた作品数点を選び、一次審査として数分の一に絞り込んだ。二次審査ではこれらの作品を横断的に比較し、多くの点で優れた面が見られた作品を優秀賞、多少課題はあっても趣旨や将来性を勘案して優れた点が評価できる作品を佳作とした。さらに優秀賞の中から、特に優れたものを最優秀賞とした。最優秀賞は本来は1点の予定であったが、最後に残った候補が甲乙つけがたかったため、長い議論の末に2作品を最優秀賞とした。
このような印刷物が実用に供され、市場で普及すれば、より多くの人にとって親切で分かりやすい印刷物環境が実現できる。このようにしてメディアユニバーサルデザインが広がってゆくことを期待している。
審査の過程で、いくつかの課題が見受けられた。次回以降の応募の際の参考となるので、以下に列挙する。
・ 短時間に多数の作品を比較検討するコンテストとしての性質上、たとえ入賞した作品であっても、全ての点でメディアユニバーサルデザインとしての要件を満たしていることが保証されたわけではない。細かい部分で様々な改善が必要とされる場合もあることを理解されたい。
・ 前回よりもかなりよくなったが、文字やサインと背景のコントラストに関して、配慮が十分でない作品がまだ多かった。特に白内障や弱視ではコントラストの確保が重要なので、十分に考慮する必要がある。
・ 配慮がアイデア倒れや片手落ちになっている例が見受けられた。ユーザーが実際にどのように使用するかを具体的にイメージしながら、細部までよく検討することが望ましい。
・ UDフォントを用いた作品が増えたが、単にフォントを使ったと言うだけで、必ずしも見やすくなっていない例も少なからず見受けられた。可読性の向上は特定の書体を選べばそれだけで実現できるわけではなく、字の太さ、大きさ、色、背景との組み合わせ、縁取り、シャドウ、全体のレイアウトなどを総合的に工夫する必要がある。UDフォントはもともと家電製品の操作部の文字に用いる書体として作られたため、短いテキストには有効だが、長いテキストや複雑なレイアウトと組み合わせるには必ずしも適していない。目的に応じて最もふさわしいフォントを使い分けることが大切であろう。
・ 制作者自身が決めた配色ルールと、実際の線や文字の色がところどころ違っているなど、単純なミスが見受けられた。カレンダーでは、土日だけを塗りわけて祝日を塗り忘れているもの、振替休日を見落としているものなどのミスが見られた。単なる試作デザインの提案だけに終わることなく、製品として通用しうるだけの完成度を追求することが大切であろう。
また、審査に当たって今後検討すべきいくつかの課題も見られた。
・ 第1回のコンテストでは学生の作品と一般の作品に質的に大きな差がなかったため、今回は両者を分けずに審査した。しかし全体的な質向上の影響か、学生の作品はばらつきが大きく、応募作品数に比べ入賞作品数が少なくなってしまった。しかし学生の作品でも最優秀に近い評価を得ているものもあるので、経験の多寡は必ずしも作品のレベルとは一致しない。今後の奮起に期待したい。
・ 第1回とことなり、単なる試作デザインの提案でなく、すでに製品として実際に印刷・使用されている作品の応募が増えてきた。実際の製品は、すでにメディアユニバーサルデザインの成果を社会で具体的に実現している点や、製品化のために細部に至るまで細かい検討がなされている点で意義が大きい反面、制作者が自由に腕を振るえる試作デザイン提案に比べると、納期やコストによる制約やクライアントの意向との調整のために、必ずしも十分な工夫ができない場合もあるというハンディもある。同じレベルの作品であればすでに社会の実用に供されているものの方が高い評価になりやすいが、そうすると本業以外の意欲的な新分野にチャレンジした作品や、学生・アマチュアの作品が評価を得にくくなる。このため両者を同列に審査するのが難しいケースもあり、今後は試作デザイン提案とすでに実用化している製品を区分して審査することも検討する必要がありそうである。