共創ネットワーク・グループ事例


共創ネットワーク(企業コラボレーション出来る経営)への変革

印刷組合ドットコムの活動について


1.政府政策の大転換
 平成11年3月、中小企業近代化促進法(制定は昭和38年)が廃止され、この年の7月、中小企業経営革新支援法が新たに制定された。これは中小企業に対する国の政策の大転換を意味する。従来は一番ゆっくりした船にスピードを合わす、そして全体を底上げしていく護送船団方式だったが、これからは本当にやる気のある企業を応援していく自立の時代になったと言えよう。これは結局、日本を引っ張っていける中小企業だけを残していく、と捉えてもいいかも知れない。「生き残りの時代」そして「経営努力なくして未来がない時代」の到来、言い換えれば「企業努力しない会社には未来がありませんよ」という国からのメッセージともいえる。
 またちょうどこの頃、省庁再編が行われ、通産省が経済産業省になり、印刷業界の所管が「紙業印刷業課」から「文化情報関連産業課」通称「メディアコンテンツ課」になった。これには国の大いなる意志というものが感じられる。
 国が印刷業界というものの役割の多様化、変化を求めているのではないかと思われる。

2.設立の基本理念と事業領域
 このような印刷業界を取り巻く大きな時代要請の変化の中で、印刷組合ドットコム(株)は、平成12、13年度、東京都印刷工業組合の総合デジタルプロジェクトから生まれた。このプロジェクトの委員長、副委員長、委員である三松堂印刷(株)(矢部一憲社長)、(株)金羊社(浅野健社長)、水上印刷(株)(水上光啓社長)、(株)大丸グラフィックス(中島弘稀社長)の4社の基本的な合意に基づき、資材調達からビジネス・コラボレーションまでの広範な電子市場(e―マーケットプレイス)の実現に向けた事業会社設立の計画が進められた。この事業会社は「印刷組合ドットコム株式会社」の名称で、平成13年11月1日に設立された。印刷組合ドットコムの事業は、あくまでバイヤー(組合員企業)が運営する「健全な共同調達事業」である。つまり、組合員各社が個別に持っている調達部門(担当)にかかる間接コストの無駄を少しでも削減するための、調達のアウトソース先であるとの位置づけが重要である。現に立ち上げ4社の調達担当者は9人いたが、ドットコムにアウトソース後は、計4.5人に半減している。これらを実現する方針として、バイヤー側主導による「健全なバイヤーと健全なサプライヤが参画する健全な電子市場の構築を目指す」を基本理念としている。
 
この事業は、全印工連が推進する2005計画の共創ネットワークグループの一環として位置づけられ、組合事業に深くリンクし、印刷ビシネス支援型の電子市場を形成することにより、印刷業界の発展に広く寄与していくことを目的としている。なお、これらの事業を理念としてではなく、実効ある形で実践するため、協同組合ではなく株式会社として設立するに至ったのも、大きな特徴である。
 
印刷組合ドットコムは以下の2つのステップで事業領域を拡大していく計画となっている。

第1ステップ

●eー資材「印刷資材の電子調達」
 (1)「選択と集中」による資材の最適調達
 (2)受発注の電子化による業務コストダウン

第2ステップ

eーコラボ「コラボレーションによる印刷ビジネスの支援」共通互換ルールや協調生産環境の採用を推進する
 (1)組合員社内システムのIT化支援
  (内なるe―ビジネス化対応)
 (2)顧客のe―ビジネス対応システムの構築
   (取引き型サイト構築対応)
 (3)制作/製造のコラボレーションのためのネットワーク構築
   (CTPワークフロー・電子送稿など)
 (4)Web活用による制作支援やコンテンツ管理
   (DAM構築など)

3.印刷組合ドットコムの現状
 今、「流通革命」ということが大きく言われている。流通革命が元気な産業・企業のキーワードになっている。V字型業績回復企業は、グループで流通のしがらみを排除している。そして物品の流通革命で自社のトラック、倉庫は必要なくなっている。
 印刷業も顧客から流通革命を要求され続けている。極短納期納品、オンデマンド納品、さらなるコスト圧縮といった顧客の要求に応えるためには、印刷においても流通革命が必要であり、製造・物流がバラバラでは、流通革命は実現できない。
 得意先から要求される印刷の流通革命に沿うためには、印刷資材の調達についても流通革命が必要になる。そのためには「サプライヤの選択的な集中」、それから「使う資材を選択集中」することがキーポイントなる。
 
現在第1ステップのe−資材に関しては、用紙に関するアイテムのホームページが完了しており用紙は6,500アイテムを搭載している。昨年の8月にはPS版の販売を開始しており12月にはアイテムを拡充した。10月にはノーカーボン(一般品)、11月には再生100%のノーカーボンの販売を開始し、12月1日にはインキの販売を開始した。

 東京工組の正会員であることがドットコム会員の条件である。平成16年1月5日現在会員数は361社、発注社数は延べ73社となっており平成15年1月〜12月の累計取引実績は40億円となっている。

 東京工組は2,100社を若干切ったところだが総年間売上高は約6,700億円と言われている。
 
そのうち、材料購入額は大半を用紙で占めていて1,100億円あると推定される。従ってドットコムの資材関連売り上げの可能性は大きく、その伸びは今後の展開次第であるといえよう。

4.今春以降の展開
 第2ステップのe―コラボに関しても東京工組の事業として「eラーニング」に着手している。まず手始めとして、JAGATのDTPエキスパート受験講座をスタートした。
 印刷組合ドットコムは今春3月増資を計画しており全国から何社かが株主に加わる予定という。
 
第1ステップの共同資材購入に関しては東京工組の正会員であることが条件だが、今後プログラム内容を見直し全国展開を検討する可能性もあるようだ。
 第2ステップに関しては、web上の画面で、編集・入力・訂正などをできるASPサーバーの導入、リアルタイムの制作システムなどのASPサービスは、正しく有効に利用してもらえるなら全国展開も考えられるということである。
 これからの印刷組合ドットコムは「単独経営から脱皮し、コラボレーション経営の布石を作る」を目指して、全日本印刷工業組合連合会8,000社のスケールを生かした全国展開も視野に入ってくるものと思われる。
 なお、現状の印刷組合ドットコムの活動に関してはホームページで紹介されている(http://www.ekumiai.com/)ので参照されたい。今後の展開に関しては随時このページで紹介していく予定である。

(文責 たなか経営研究所 田中 肇 )

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