共創ネットワーク・グループ事例


印刷OEM研究会

印刷物を工業製品に
 印刷産業はクロスメディア化や需給のアンバランスに代表されるように、従来の経営の延長線上では企業としての健全性を保てない時代に直面している。受注量が変動するため多くの企業は要員・設備共に下限を前提としているが、これを越える受注量になれば同業他社に外注することが日常的である。この同業者間取引(仲間仕事)における品質上の契約は「見本(色校正刷)通り」以外は皆無である。
 印刷物も他の工業製品と同様に定量的な正確さ(許容範囲を含む)が求められ始めた現在、品質上の契約は従来通りで良いのだろうか。定量的な契約項目はどうあれば良いのだろうか。研究会は金羊社浅野健社長のこうした呼びかけに全印工連傘下の11社が集まり2001年にスタートした。私たちはこれらの課題を解決するための必要最低条件を「ミニマム・スタンダード」と表現し、この標準化を自社が核となる外注レベルから「印刷業界だけでなく印刷メディアに関わるすべてのレベルで構築したい」と活動してきた。

下請けから共創へ
 受注生産である印刷製品、特に枚葉オフセット印刷は発注者による要求品質の格差が大きく一方の常識は他方では非常識という状況があり、「見本通り」もクライアントと印刷業者、同業者同士でさまざまなトラブルの原因となっている。私たちは品質契約を品質基準に従って製造を行う標準化により同業者間取引を「元請」「下請」の関係からOEM(相手先ブランドによる製造)に進化させて設備の共有へとつなげ共創(コラボレーション)理念を具現化したいと考えている。
 これまで個々の企業で取り組んできた印刷標準化を日本プリンティングアカデミーで作成した研究会オリジナルテストチャートを用い、印刷機・インキなど資機材メーカの協力を得て参加企業全体で実施し評価を行ってきた。
 この間PRINTEK TOKYOでの発表、PAGE2003のカンファレンス、IGAS2003やPAGE2004への出展などによって私たちが行っている標準化に関心が高まり参加者は現在40社を超え、例会には印刷業界と関連する業界の70人が出席する活動になっている。

研究会の方向性
 これまで参加各社の印刷の現状把握からミニマムスタンダードの研究(標準化の仮説→実験→検証→理論の確立)をおこなってきた。この過程で「感性」といった評価しにくかった側面も取り込み、見本なしで目標数値の許容範囲に収めるテストでは設備環境の違いを越える結果がIGASやPAGEで来場者の興味をひいた。またこれまで実験検証してきた印刷の品質管理方法を昨年夏に特許出願している。
 今後は理論の確立を基にユーザとタイアップした印刷の実証実験、管理ソフトウェアの機器(印刷機)組み込み、実作業で資機材の利便性向上、Webを利用した受発注システムの構築などの活動を考えている。これらの課題に集中的に取り組む分科会も立ち上げ予定となっている。
 ミニマムスタンダードを認知してもらう啓蒙と普及活動そして技術認証は印刷会社や印刷関連団体だけにとどまらず、印刷物のユーザ・クライアントを含めた印刷メディアに関わるに人々すべてを視野に入れている。また現在は任意組織であるが今後は公益的組織を目指し、普及に当たっては業界OBの参加や加盟資機材メーカのユーザも利用できる形態を想定している。

標準化のもたらすもの
 具体的には次のような効果が考えられている。

  1. 社内 印刷物の標準化
    一定した評価基準、機械毎・再版時のバラツキ解消
  2. クライアント 品質安定による品質保証
    一定した校正評価方法、校正と本刷りの一致、校正なしの本刷り
  3. 同業者 自社基準による印刷外注
    品質レベルに合わせた外注業者の選定、外注業者毎のバラツキ解消

 標準化によってどの企業でも仕上がりが同じで特徴がなくなるという意見もあるが、野球に例えればストライクゾーンの設定であり、どこにどのようなボールを投げ込むのかは投手の考え方と技量つまり各社の技術である。またコーナーに投げ込む技術(クライアントの要求に合わせる)を磨くことも考えられる。
 毎月の熱中した議論の中に各社が培ってきた技術の多様性「おもしろさ」があり、そこに印刷の「奥の深さ」を感じる。印刷企業が考えたスタンダードがユーザ・インターフェイスを充実させられれば、印刷に関わる総ての人のメリットになると確信している。

  • 名称:印刷OEM研究会
  • 発足:2001年7月
  • 目的:印刷標準化(ミニマムスタンダード)の研究、開発、普及、認証
  • 代表者:浅野 健(株式会社 金羊社 社長)
  • 座長:三上 伸(青森オフセット印刷株式会社 社長)
  • 事務局:株式会社 金羊社 東京都大田区鵜の木2-8-4
         電話03-3750-2867
  • その他:参加は原則として企業単位、定例会を毎月開催している。
         他に会員各社の視察会を実施。

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